diff --git a/articles/0064/_posts/2024-08-12-0064-20thInterview.md b/articles/0064/_posts/2024-08-12-0064-20thInterview.md new file mode 100644 index 00000000..90ee7b3d --- /dev/null +++ b/articles/0064/_posts/2024-08-12-0064-20thInterview.md @@ -0,0 +1,806 @@ +--- +layout: post +title: るびま 20 周年記念 インタビュー +short_title: Rubima 20th interview +tags: 0064 +post_author: るびま編集部 +created_on: 2024-08-12 +--- + +{% include base.html %} + +## はじめに + +るびま 0001 号が発行されてから 2024 年 9 月 で 20 周年を迎えます。そこで 20 周年記念企画として、笹田さん、高橋会長のお二人に、20 年前の思い出話を中心にるびまのあれこれをお話ししていただきました。 + +## 参加者 + +### 笹田さん + +ささだ (この記事の表記は笹田)。るびまの言い出しっぺ。Ruby コミッター。 + +![笹田さん]({{base}}{{site.baseurl}}/images/0064-20thInterview/portrait_ko1.png) + +### 高橋会長 + +創刊時からのるびま編集長。日本 Ruby の会の代表理事。 + +![高橋会長]({{base}}{{site.baseurl}}/images/0064-20thInterview/portait_kaicho.png) + +### 聞き手 + +三村さん、 hogelog さん、neko さん + +## インタビュー + +一同 +: よろしくお願いします。 + +三村 +: るびまが 20 周年を迎えるにあたって久々に周年記事を作りたいということでこの記事を企画しました。ここ数年多分るびまを一番読み込んでいるであろう neko さんがるびまの編集を最近やってくれるようになったので、だったら、neko さんに創刊当時らへんのことを聞いてもらう記事があったら面白いんじゃないかということで、今回お呼び立てをしたという感じになります。 + +笹田 +: まずはるびまがどうやってできたかという話なのですが、昔のメーリングリスト見てたら、IRC[^1] で話をしてたんだよねって話が出てきました。さてそのログをどこにあったかなっていうので調べています。ですが、昔のログなくなっちゃってますね。歴史の闇に。昔の人の記録って手紙とかが発掘されたりするけど、100 年後、我々の時代のやつはもう何も分かんないんですよね。 + +高橋 +: なんか変なデジタルのデータが発掘されるんじゃないですかね。 + +笹田 +: Twitter にどうのとか言って、Twitter サービスしてるとは思わないし。 + +高橋 +: 誰かが手元に取ってるんですよ。 + +笹田 +: それハードディスクが出てきて。 + +高橋 +: そうそうそう、謎のスクショが出てきたりとか。 + +三村 +: 第一号がいつでしたっけね。 + +笹田 +: 2004 年の 9 月です。Ruby の会が 2004 年 8 月に設立されまして。 + +三村 +: そうだったんでしたっけ。 + +笹田 +: それでなにしようかってのの一つがるびまでした。 + +三村 +: 自分これどうやって知ったんだろうなこれ、たぶん ruby-list に流れたとかで気づいたのかな。 + +笹田 +: よく言うんだけど、昔はコミュニティが小さいのでメーリングリストに流せばみんなに伝わりました。今どこに流せばいいのか。 + +高橋 +: みんなとは誰なのか ( 笑 ) + +笹田 +: みんなが小さかった。 + +三村 +: るびまのリリースフローで、リリースしたら ruby-list とかに流しましょうみたいなのが残ってるんですよね。とはいえ、みんなどこを見てるのか。 + +笹田 +: そうねえ、今はメールを見る感じではない。 + +三村 +: わかんないですけど、私ももうちゃんと ruby-list を見てないっていうのもあるんですけど、人は増えてたりするんですかね。リストに入ってくる人。 + +高橋 +: いやあ、どうですかねえ増えてないんじゃないですかね。 + +三村 +: 年に一、二通ぐらいしかいま出ていなかったりするんですかね、ruby-list。メール自体。新規メールみたいなのは私のフィルター上だと 2023 年の 10 月がラストですね。 + +### 笹田さんの連載 + +neko +: 今日はこのようなことが、全部じゃなくても一部でも聞けたらなと思っています。 + +``` +- Ruby コミュニティーに最近いらした読者向け +  - 笹田さん、高橋さんの自己紹介 + - 笹田さん、高橋さんそれぞれのと Ruby の関係 (いつ頃からどういう形で Ruby と出会ったり、活動してきたのか) + - 笹田さんと高橋さんの関係性 + - るびまを始めたきっかけ + - 始めるにあたって何からやったか、何が大変だったか + - 0001 号を出した時の当時の気持ち、今振り返っての気持ち + - 難易度高の巻頭言がめちゃくちゃ好きなのですが、難易度高な経緯とか聞きたい + - 笹田さんの次の記事... + - 20 年続いていることについてどうですか? + - どうしてこんなに長く続いてると思いますか? + - これからのるびまでこうしたいなとかこうだったらいいなとかあればお伺いしたい + - 現在 0064 号準備中で、63 回発行されているわけですが、1 番おすすめだったり思い入れのある記事 or 号 (初めてるびま読む人にまずこれを読んでほしいという観点で聞けるとうれしい) +``` + +高橋 +: 笹田さんの次の記事。 + +neko +: 次の記事読みたいな。 + +高橋 +: YARV Maniacs の続きとかそういうやつですか。 + +笹田 +: いやあ 4 月ぐらいだっけ、再開するっていうので合わせて書きたかったんだけど、全然、書けませんでしたね。 + +三村 +: 書いていただけるという話を書いていただいてた。 + +笹田 +: YARV が 20 年目なんですよ。というのもあってちょっとまとめたいなと思ったんですけど、ちょっと書けなくてすいません。 + +neko +: 楽しみにしておりますよ。 + +### 笹田さんと高橋さんの関係 + +高橋 +: 笹田さんと高橋さんの関係性って、これ謎ですね。 + +neko +: そうなんだ。 + +高橋 +: いつだったっけ。 + +笹田 +: RHG 読書会じゃないですかね。 + +高橋 +: 普通に会ってしゃべるようになったのはそこですよね。 + +hogelog +: インターネット越しに Ruby のコアの人たちが会話してるのを見ていた。ワナビーみたいなポジションで見ていたみたいな感じ。 + +高橋 +: リアルタイムで見てました? るびまの創刊の話とか。 + +hogelog +: 創刊の話とかを見てたというか、創刊した頃の記事とかを普通にインターネット越しに何か見たり、ruby-list とか眺めていたり、笹田さんっていうすごい人が YARV ってもの書いたんですよみたいなのをわーってなっていったりっていうのを、すごいなーって、インターネット越しのプログラミングとか全然できない人として見ていた感じ。 + +高橋 +: インターネット越し見てたのって、リアルタイムで見てたのはいつぐらいからですか? + +hogelog +: 私の場合は、1.8 とかは、1.8 とか 1.7 とかそんな頃に、 Ruby は遅いよねなんて煽られていたような時代とかになんか眺めていたり、そっからなんか速くなったらしいぞみたいな、そんな感じですね。 + +高橋 +: なるほどじゃあ結構昔から、見てるだけなら見てたみたいな。 + +三村 +: 私も多分その創刊時期ぐらいは同じで、大学の講堂かどっかでずっと読んでたような記憶があって、創刊号とかそういうのを。どこのタイミングか忘れたんですけど、一度るびま会議みたいなのがあったんですよね。上野の永和でやったタイミングで。 + +高橋 +: 永和さんのやつか。 + +三村 +: そこぐらいのタイミングの時に編集入って、数年間ちょっとやっていて抜けていた時期があって。西山さんの発表で再開したいという発表があって、じゃあやりましょうということで、去年再開しました。最初期の頃、実際どうだったかっていうのはあんまり知らないっていう感じですね。 + +高橋 +: そうかやっぱりじゃあ見る人は見てる。見るだけだったら早い時から見てた人がいるみたいな感じなんですよね。2004 年だもんな。1.8 がリリースした後ではある。 + +三村 +: うん確かに 1.8 は出てると思います。 + +高橋 +: 話を戻すと、RHG 読書会ってものがあったんですよ、みたいな話をたぶんしないといけないんですよね。RHG っていうのがあるんですよ、みたいな話もいるのか。 + +neko +: どうなんだろう。本と会があったということはなんか聞いたことはあるくらいの感じ。 + +高橋 +: まず本があって、今はその本は手に入らないんですが、ネットに青木さんが公開されている ([『Ruby ソースコード完全解説』サポートページ](https://i.loveruby.net/ja/rhg/)) ので、ものは読めるという状態ですね。RHG はいつでしたっけ。 + +笹田 +: 2002 年の 12 月。出版されてすぐ、高橋さんが「じゃあ読書会やりましょう」っていう。 + +高橋 +: そうそうそう出た時に。 + +笹田 +: で、そこに行ったという感じですね。参加させてもらって。もしかしたら 2 回目とかかもしれないですけど。 + +三村 +: その時は笹田さんは Ruby とか使われてたんですか。 + +笹田 +: 使ってるかどうかちょっと分かんないですね。使ってたんじゃないかな。使ってた。 + +高橋 +: メーリングリストに入ってたぐらいですからね。 + +笹田 +: 使ってましたね。使ってたと思います。 + +高橋 +: この頃の Ruby を使ってますっていうのは基本的に仕事で使うっていうのはなくて、趣味で何かを書くときにちょっと Ruby のコードを使って、Ruby を使ってコードを書いたことがありますぐらいな感じなんですよ。プロダクトを作るための言語ではなかった。なかったわけではないんだけど、そうやって使ってる人はほとんどいなかった時代。 + +hogelog +: この頃笹田さんは使っていたっていうか、Ruby はいじってたんですか。 + +笹田 +: 2002 年あたり、卒論である CPU 向けの pthread のライブラリ作るみたいなのをやってて。その時に Ruby のソースコード、Ruby でスレッド使ってるからどうなってるんだろうって見ていました。そんな昔話。 + +hogelog +: そこからの流れで、Ruby のスレッドをネイティブスレッドにしたじゃないですか、笹田さんが。それが 1.9 でしたっけ? + +笹田 +: それが 1.9 ですね。 + +hogelog +: YARV とかと一緒に、YARV とかと一緒の感じで組み込んでいった。 + +笹田 +: そうそう。自分がやりたくて、どうやってるのかなって調べて。これでだったらこういう作り方がいいのかなって。最終的には 1.9 が出た時に私が作ったやつに変わったという感じですね。 + +高橋 +: 1.9 のリリースは 2007 年ですね。2007 年の 12 月。 + +笹田 +: 昔の RHG 読書会の資料本当にないですね。それがなくなっちゃってますね。 + +三村 +: RWiki に入ってるんですね。 + +笹田 +: The RWiki ってまだあるんですっけ。 + +高橋 +: あるんじゃなかったでしたっけ。 + +三村 +: でも全然繋がんないっすね、そこのリンクに。 + +neko +: じゃあもう何も見れないみたいな感じ。 + +笹田 +: 読書会の話をこの記事でやっていいのか分からないけど、もともと[タイムインターメディア](https://www.timedia.co.jp/) って会社で SICP 読書会とか、そういう読書会文化みたいなのがあって、RHG も読書会もそこでやったんですよね。で、私 SICP 読書会の方も行ってたので、RHG の読書会があるっていうのもあるっていうんで、喜んで行ったという記憶しています。RHG は出会いはそんな感じだと思うんだけど、なんかねそこから 2004 年の Ruby の会設立まで 2 年間あったわけですが、高橋さんはなんかやんなきゃなと思ってたんですか。Ruby の会は。 + +高橋 +: Ruby の会は前に、STORES さんのときのインタビューのやつ[^2]だったっけ、あそこでもちょっと話しましたが、[Onsen Meeting](https://www.ruby-lang.org/ja/news/2003/09/08/20030908/) を開催して、これは個人でやるのはしんどいみたいなことがあって。でもその前からそもそも世の中ではユーザーグループの設立ブームみたいなのがあったわけですよ。当時はもうそれが一段落してたぐらいですね。2000 年前後の頃にいろんなユーザーグループが立ち上がったっていう経緯があり、でも Ruby はそういうのがなかった。なんでなかったかっていうとまつもとさんがいる中で、まつもとさんは自分ではユーザーグループとかは作らないじゃないですか。メーリングリストだけ作ってそこで参加してください、そうですねみたいな感じで。でも、じゃあまつもとさんを差し置いてユーザーグループ作るかっていうと、みんなやりたがる話でもないわけですよ。あと、日本での OSS のユーザーグループブームっていうのは、主に海外に開発拠点があるソフトウェアが対象で。日本で開発を頑張って世界に広まってるのは当時ほぼなかったので。そうすると海外の開発コミュニティとは別に、日本の国内での情報交換を日本語でやりたいですねっていう動機があって、ユーザーグループを作りましょうみたいな機運があったんじゃないのかなと、傍から見てて。でも、Ruby だとそれをやるメリットはないですよね。普通に日本に拠点があるので。なのでユーザーグループ設立ブームには乗り遅れていたんだけれど、Onsen Meeting とかやるとやっぱり会が欲しいねっていうのがありました。他にも LL、Lightweight Language なんとかっていうイベントが 2002 年ぐらいから始まって。最初は LL Saturday ですね。Ruby、Perl と Python と PHP と Ruby の 4 つの言語を中心的に取り上げましょうみたいな話になってて。で、Ruby 以外はユーザーグループがあったわけですよ。そういう会があると話がしやすいわけです。こういう企画をやりたいんで登壇者の人とかいますか? とかみたいな話をする相手の人っていうのが必要で。でも、Ruby にはそういう会がないので全部まつもとさんの方に投げるみたいな話になってしまう。そりゃさすがにまつもとさん大変だろうみたいな話もあり。なので、その周りにいた人たち、例えばごとけんさんとかが関わってたっぽいのかな。 + +neko +: Ruby 日本の会ができる前の話。 + +高橋 +: 例えば LL だったら法林さんとかかな。そういう人の知り合いみたいな、だいたいでもそういう人たちは知り合い同士のつながりがあるので、Ruby に詳しい知り合いとかもいるわけですよ。なんとなくそういうつながりで、でもあまり話を振られても困るみたいな感じのときに、なんかこう内輪でやってるのはあんまり良くない、っていうのと。普段はそういうときには ruby-list で聞いてくださいみたいに言うんですけど、企画の打ち合わせを ruby-list みたいなみんなが見る場所でやるわけにいかないじゃないですか。なので、なんか窓口みたいなものがあるといいっすねみたいな話はあって、それで Ruby の会になった感じですね。それは RHG 読書会とかとは全然別の流れだったんだけれど、私がその時に Ruby の人たちと一番よく会う機会が RHG 読書会だったので。RHG 読書会が終わった後の飲み会とかで、そういう話をしてたような記憶はあります。なのでその辺と人はかぶってる気がします。 + +笹田 +: 思い出深いのが、2004 年の新宿の談話室滝沢でしたっけ? あそこでなんか決起集会というか、話をしてましたよね昔。 + +高橋 +: したことがあったはず + +笹田 +: すごい昔。滝沢行ったことなくて、そのあと閉まっちゃったから行けてよかった。 + +三村 +: ちなみにその当時は高橋さんと笹田さん以外だと誰がいたりしたんですか? + +笹田 +: 誰がいたんでしたっけ。 + +高橋 +: どこまでいたんだろうな。だから明確に誰っていうわけではなかった感じですよね。 + +三村 +: なるほど。 + +高橋 +: gotoken さんとか nahi さんとかは普通に接点はあった気がしますね。あと青木さんはもちろんそうだし。 + +笹田 +: あの喫茶店に誰がいたか覚えてないですね。あずみさんがいたのかな。 + +高橋 +: あずみさんいましたね。あと usa さんはどういう繋がりだったんでしたっけ? + +笹田 +: どうなんでしたっけ、本当によくおぼえていない。 + +高橋 +: usa さんとか shugo さんとかと話はしてたような気はしますけど、当時は東京ではないので。Ruby の会を立ち上げる前に、Onsen Meeting の前に関西で KOF のイベントがあって、KOF だったかな。Ruby 関西人たちと会って話をしたりってのはしてました。 + +三村 +: そうですよね。その頃は東京にコミュニティがあるっていうよりかは、Ruby 関西勉強会が強かったようなイメージがありますね。リアルミートアップみたいなやつとかも。 + +笹田 +: そうですよね。もうちょっと経つと Rails 勉強会とかが大きくなったと思うんですけど。まだなかったですもんね、Rails。 + +高橋 +: まつもとさんも東京にいないですしね。まつもとさんが東京にいた時にちょっと集まりましょうみたいな話が出てた。でもそれは単発のイベントであって、継続的な組織をどうこうみたいな話では特になかった。 + +neko +: すごい当時の話面白い。 + +高橋 +: でも私はそう思ってるんだけど、他の人は全然違うこと思ってる人もいて、もしかしたらユーザーグループ作ろうと思ってた人もいたかもしれないですね。 + +neko +: 確かにあったらいいなって思ってる方とかはいたかもしれないけどね。 + +高橋 +: 別に作るのは誰でも作れるっちゃ作るので。私の方ではそういう話は把握してなかったというぐらいです。 + +### るびまのはじまり + +neko +: るびまが始まった頃の話を伺いたいです。笹田さんがこういうのがあったらいいなって思って始まったっていう認識なんですけど、それはあっていますか? + +笹田 +: おそらくそんな感じだと思います。私もあんまり覚えてないんですけど。その Ruby の会のメーリングリストにこういうことやらないですかっていうのを投げて。で、なんか高橋さんの返信を見てるとちょっと引いてる感じがあって。 + +neko +: そうなんですか。 + +高橋 +: 私は続けるの大変そうだなと思って。やりたい人がやれる限りやって、力尽きたら潰せばいいんじゃないのみたいな。 + +笹田 +: そんな感じですね。 + +neko +: 覚えておられたらいいんですけど、どうしてこういうのが欲しいなって思ったんですか? + +笹田 +: もともとオージス総研ってところのオブジェクトの広場 ([OGIS-RI OBJECT SQUARE](https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/)) っていうのがあって。まだ続いてらっしゃる、すごい。 + +三村 +: なんか 2、3 年前ぐらいに記事があったような気がする。でも今年も書いてるのか。 + +高橋 +: なんか 2024 年 7 月号が出てますよ。 + +neko +: すごい最近だ。 + +笹田 +: 素晴らしい。で、それが昔からいろんな記事があって。さらに、オブジェクトの輪っていう企画でインタビューとかされてたんですよね。それが面白そうで、Ruby の人たちにインタビューすると楽しいんじゃないのみたいなのがありました。 + +neko +: だから確か初めから Hotlinks があったと思うんですけど、むしろそれがやりたかったみたいな感じ。 + +笹田 +: そうですね。そんなに大変だと思わなくて、実際はすごく大変だったんですが。ちなみに、るびまの開始がなんでこういうタイミングだったかっていうと、私が松本さんに会いに松江に行く機会があってですね。それに合わせてこういうインタビュー記事をやったらいいんじゃないのっていうのがあったんですよね。 + +neko +: なるほど。 + +笹田 +: 2004 年 8 月 30 日に行ってインタビューしたみたいですね。記事に残ってました ([Rubyist Hotlinks 【第 1 回】 まつもとゆきひろさん](https://magazine.rubyist.net/articles/0001/0001-Hotlinks.html))。でもこの Hotlinks 1 回目はすごい短いんですよ。1 時間弱くらいだったと思います。実際にそれくらいでよかったんだけど、以降の回がどんどん長くなっちゃって、大変でしたよ (編集してくださった方々が)。 + +neko +: 今その記事をざっと見てます。ご挨拶しに行ってっておっしゃってたんですけど、何かイベント的なのがあってその中で? + +笹田 +: 未踏ソフトウェア創造事業っていうのがあって、まつもとさんにお会いするってことで旅費が出たんですね。それでアポ取って、[NaCl](https://www.netlab.jp/) の方に押しかけましてご挨拶してきたという感じです。 + +neko +: じゃあ完全に個人的に行きたかったので行ったって感じだったんですね。 + +笹田 +: そうですね、はい。 + +neko +: 初めて知りました。 + +笹田 +: あとあんまり人と喋る機会がなかったので。こういうのをやってると、なんか人と喋る機会になってよかったんです。少なくともインタビューだったら色々話聞けるし。なんだかんだでやっぱるびま読んでくださってる方が少なくとも当時は結構いらっしゃって。そうすると毎回とか結構 Hotlinks っていうので自分の名前が出て、最初のほうはインタビュアーはさせてもらって。なんか見てもらうのはキャリア的にはたぶん良かったと思います。Hotlinks の話になっちゃった。 + +neko +: そういう話も伺いたかった。 + +### 巻頭言 + +笹田 +: 記事で言うと巻頭言を高橋さんずっとやってるよね。 + +高橋 +: はいはい。 + +neko +: 私巻頭言ファンです。 + +高橋 +: なにが良いですか。 + +neko +: なんだろうな、巻頭言というか読み物として全部面白い。あと個人的には質問リストに書いたんですけど、難易度高ってついてるのになんか謎のこだわりを感じてて。 + +高橋 +: 私はつけてないんですけど。 + +neko +: 難易度高ってなんなんだみたいな。 + +笹田 +: あれは最初私がつけてました。適当になんかあるといいかなっていうので。 + +neko +: 完全に私のツボには刺さってます。なんかいいなって思って。 + +三村 +: 巻頭言の、巻頭言だけじゃなくて全ての難易度みたいな。本当なんか途中から、途中からなのかなんか本当変なのがつけ出されましたよね。普通につけちゃいけないのかみたいな雰囲気はちょっと感じながらやってたとこがあります。 + +neko +: ひねらないといけない。 + +笹田 +: 好きにするといいんじゃないかと思います、やりたい方が。 + +neko +: 巻頭言毎回書くときにどういうことを考えておられたり、どういう内容を書こうって思っておられるのかとか、なんかあったらちょっと伺ってみたい。 + +高橋 +: あんまり考えてないんですよね。書けるネタを考えて、今回はこれが書けるからこれにするかみたいな。 + +neko +: そのときに思っていることとかを文章にする感じなんですか。 + +高橋 +: そうですね。 + +笹田 +: どれくらい時間かけてるんですか。 + +高橋 +: すぐには書けないですね。結構書き直したりとかもしているので、書き始めとは全然違う内容になったりすることはままあり。 + +笹田 +: まとめの本とか出せばいいと思うんだけど。 + +neko +: 私もそれ。 + +三村 +: 話聞きながら思ったら確かにそれなんですよ。 + +高橋 +: 話は出て、原稿も作ってみたこともあるんですが、やる気が続かずというか。 + +neko +: 確かに大変そうではある。 + +笹田 +: あの頃はどうだったねっていうのを一緒に書きながらだと、歴史的資料になりそうですね。 + +neko +: なんかこれは雑談レベルではあるんですけど、いつかの Asakusa.rb で巻頭言の話になって、技術書典で巻頭言集を出してその巻頭言を高橋さんに書いてもらっていいんじゃないかみたいな話をしたりしたこともあります。 + +三村 +: るびまのライセンス的には何でしたっけ編集部が持つことになる、日本の会が持つんでしたっけ。 + +高橋 +: いや、持たないことにしてて。 + +三村 +: でしたっけ。 + +高橋 +: 著者さんにお任せいいみたいな。Rubyist Magazine として掲載する分にはもらって、ぐらいな。なんかそこはいろいろとこだわりがある人もいそうなので。あんまりこう記事全体のライセンスを設定するのは微妙ですかねみたいな話をしていたような記憶があります。 + +三村 +: [るびま記事のライセンス](https://github.com/rubima/magazine.rubyist.net/blob/master/license.md) っていうのが、るびまの今リポジトリに実は存在していて。でこれ結構、たぶん昔からのやつなんですね。著作権自体は著作者に、署名のないものに関しては編集部に属する、か。で編集部は排他的ではない複製販布の権利を得る。なのでそう、まとめて勝手に記事を売るっていうことはできちゃう。ですよねこれ。昔からあるなっていうのは、編集部は著作物を CD-ROM や紙媒体などで、っていう CD-ROM ってもうないよねっていう。 + +neko +: 本当だ。でも紙媒体にして配布できる権利があるんだったら、技術書展で配りたいと思ったら配ってもいいっていうことなんですね。 + +笹田 +: たぶん 2 つ、記事が書籍になりまして。青木さんの Ruby の書き方の本 ([Rubyist Magazine (るびま) 出張版 正しい Ruby コードの書き方講座](https://www.books.or.jp/book-details/9784839923204)) と cuzic さんの Windows OLE の本 ([Rubyist Magazine 出張版 Ruby on Windows](https://www.books.or.jp/book-details/9784839926687))。それは著者の方が編集さんと調整されてっていう。 + +高橋 +: そのままではないですよね。 + +笹田 +: 書き直してるんだと思いますね。 + +三村 +: 青木さんのは追加のやつがあったり、いろいろあった気がしますね。 + +neko +: 青木さんの方は本買って持ってます。結構がっつりちゃんとした本。買った当時はこれが本になっててありがたいなぐらいだったんですけど。自分が編集部の一員に入らせてもらって、今からこういう感じの本を作ることになりましたって考えたらすごく大変そうだから、よくこれが本になったなっていう。 + +笹田 +: 青木さん文章面白いから、最初からクオリティー高いんですよねぇ。 + +### 20 年続いていることについて + +neko +: ちょっと質問変えてみて、先ほど高橋さん続けるの大変そうだなって最初思ったっていう話あったじゃないですか。だけど実際今 20 年続いてる。高橋さんと笹田さんへの質問で、20 年続いた理由とか、こういう感じだったから良かったのかなみたいなのがあればお伺いしてみたいです。 + +高橋 +: 何ですかね。 + +笹田 +: 20 年続いてるの本当すごいですね。私手引いて長いので、続けてくださる方がいらっしゃってありがたい限りです。それ以上はないかな。やっぱ疲れちゃうんですよね。なので継続していろんな方が携わってくださるっていうのは本当にありがたい。あとはリリースの方法。最初は隔月とか毎月とかでやってたけど、ウェブの記事とかあるんだからまとめて出す意味ないんじゃないのみたいなことが言われていて。で、今 2024 年からのやつはもうまとめて出すではなくて、この期に出す。この期間にちょこちょこ出していくっていうふうに変わりましたけど。なんかそこがプラスに働いた部分とマイナスに働いた部分があったりするかな。最初の頃、結構頻繁だった頃はその締め切りがあるからこれまでに出そうみたいな、あって。それを出すぞって音頭をとる。音頭とる人がいないとなかなか記事がでないというのがありそう。でも、やっぱりなかなか続かない気もするので、今旗を振ってくださる方がいらっしゃるから大変素晴らしいなと思っています。関係ないけど、最初にナンバリングするときに 4 桁でやったんだけど、千号続けるのかって言われて。もちろんそんなつもりは全然なかったんだけど。 + +neko +: 確かに。3 桁、2 桁とかにしてたら 100 までいったときちょっとよぎるけど。0064 とか書いてると安心感確かにある。 + +三村 +: 20 年で 64 なんで、いくつだ。数千年かかる感じですかね、桁を埋めるには。 + +高橋 +: 続いてるといっても年に一号が出るか出ないかみたいなときもあったので、それぐらいのペースでとりあえず次が出てれば続いてるみたいな感じで続いてるのはよかったんじゃないですかね。 + +笹田 +: 継続という話でいうと、なんだかんだ言ってやっぱりインタビューが強いですよね。インタビュー出さなきゃっていうので、次を出そうみたいなのが、少なくとも最初の頃はありました。あとはコンテンツ力ですかね。例えば最初期の Rails の記事とかるびまでしかたぶんなくて。それで見られたりとかね。あと [プログラマーのための YAML 入門 (初級編)](https://magazine.rubyist.net/articles/0009/0009-YAML.html) とかもガッと書いてくださって。いまだに検索されるっていう話は聞きます。 + +三村 +: いまだにたぶん、Google アナリティクスとか見るとすごく高かった気がしますよね。 + +笹田 +: だから、すごい書いてくださる方がいらっしゃった。今は公開する媒体がたくさんあって、その中でるびまをわざわざ選ぶってことはだいぶ減った。例えば私 Web+DB PRESS の記事とか書かせてもらったけど、るびまの方には書いてないから。 + +三村 +: 言い方はあれなんですけど、るびまに記事を書いてくれる人のるびまに書くインセンティブが、もう今ほぼないんですよね。 + +笹田 +: インセンティブに話は最初にもしたんだけど、お金がかかるとじゃあお金の分だけやろうっていう話にもなりかねなくて。少なくとも金もらったらこんなにできないよっていうのはありました。インセンティブ設計難しいよね。 + +三村 +: インセンティブ、お金っていう意味もあるんですけど、知名度とか。例えば初期の頃だと自作ライブラリーの紹介記事とか結構あったじゃないですか。ああいうのが今の時代ここでやる意味がちょっと、薄れてきてしまっている。 + +笹田 +: Zenn とかで書いたほうがいいよねみたいな。 + +三村 +: そうですそうです。Zenn とかあとは技術的な、例えば Rails のスピードアップ記事みたいなやつとかって、所属してる会社のやつとかに書いたら評価にもつながるし。 + +笹田 +: そうそう、私もそうしてたわ。 + +三村 +: そうですよね。Ruby のスピードアップ記事とか会社で書いたほうが評価になりますもんね。 + +笹田 +: だからさ、ほかの記事へリンクするってのをやりたかったんだよね。そこにリンクがあります終わりっていう記事をやりたくて。この[鳥井さんの記事](https://magazine.rubyist.net/articles/0055/0055-RubyKaigi2016Nursery.html) が、まさにそういうリンクだけの記事だったんですが、多分これだけなんじゃないかな。でも、るびまがあんまり今ではハブにはなってないので。そこを見るって感じじゃないからあんまり意味がないかもしれないかな。 + +高橋 +: ハブ欲しいっていう話は普通にあると思いますよ。 + +笹田 +: ここに行けば Ruby の情報が入る。 + +高橋 +: それがないので、今は。 + +neko +: そうですね。RubyKaigi のまとめみたいなの今泉さんが Cosense に作ってくださって ([RubyKaigi 2024 - ruby-jp](https://scrapbox.io/ruby-jp/RubyKaigi_2024))、結構みんな喜んでいる。それを考えると、今高橋さんがおっしゃったみたいに Ruby 自体のハブがあると嬉しいって思う方も結構いらっしゃる気がしますね。 + +笹田 +: そういえば、るびまだと編集がつくっていうのは大きくて。なんだかんだで、人の目が入る。例えば Zenn とか Qiita に自分がアップロードする場合、自分だけで書いて公開するっていうフローが多いと思う。だから編集の入る余地がある、るびまの記事を書くっていうのがちょっと、特別感はあるかもしれない。 + +三村 +: neko さんに 30 周年の記事をたぶん最初に書いてもらったのが、たぶん neko さんにるびまと関わってもらう最初のタイミングだった記憶あるんですけど。昔はるびまの記事自体を非公開の状態で編集してから、公開日のタイミングで公開するみたいなことやってたんですけど、それやめて、オープンなプルリクエストでやるみたいなことをやるようになったんですね。そしたらものすごい量で、編集じゃない人がレビューしてくれてすごい助かるみたいな。 + +neko +: 「通りすがりのものです。ここ typo してますね」って言って PR にコメントくれるということがありましたね。 + +三村 +: 結構、編集は編集でコストではあったので。やり方を変えて良かったとこの一つかなって気はしますね。 + +笹田 +: るびま全体を久しぶりに見直してみたけど、イベントの記事がまとまっているのはなんだかんだで良かった感じがしますね。30 周年の記事もそうだけど。インターネット上のいろんな記事が、媒体閉まってしまって見えなくなりました、ブログのサイトになくなりましたとかで無くなっちゃうので。るびまが続く限り、これまでのなんとか会議、30 周年記念イベントとかの記録があってくれるのがありがたいですね。 + +三村 +: 定期的にイベント記事ばっかり、技術記事がないみたいな批判に上がってて。私もそう思ってた時期もあったんですけど、Asakusa.rb とかで最近コミュニティに入りましたみたいな人に過去のやつを参照する時に、残ってるのるびましかなくてみたいなのが多くて。たぶんるびまのアピールポイントはそこなのかなっていう。多分日本 Ruby の会が続く限りは記事が残り続ける、っていうのは一個の強みかなと思って。トレンドだけを追いかけるっていうよりかは、数年後に価値がある記事を残しておくといいのかなっていうのは一個、ここ最近思ってるところですね。 + +高橋 +: それはありますね。WEB+DB PRESS が無くなっちゃいましたからね。企業ブログも無くなっちゃいますしね。さっき言った笹田さんのリンクを載せるとかっていうのは、RubyKaigi の直前号とかだとたまにやってたりとか。 + +neko +: 確かにありますよね。 + +笹田 +: 資料へのリンク。 + +高橋 +: 資料もそうだし、他の人が書いた記事にリンクみたいな。 + +笹田 +: あとイベントの話だと Regional RubyKaigi のサイト ([Regional RubyKaigi](https://regional.rubykaigi.org/)) にレポート欄を用意して、レポートまだありませんという表示をして圧をかけたのは私です。みんな書いてくれてよかった、ありがたい。 + +三村 +: あれ、大江戸 07 のレポートあるんだ。ひたすら Asakusa.rb は書いていないという記憶しかないので。 + +笹田 +: それから、編集のプラットフォームが Wiki から GitHub に変わったのは、2022 年かな。みよひでさんによる大きな功績で、ありがたいですね。それでいろんな人からフィードバックもらえるような、やりやすくなりましたね、現代的というか。最初はずっと Wiki でやってて、公開でやってもよかったんだけど、インタビューとかだとこの内容大丈夫かみたいな。消したいときに公開されてるのまずいっていうので全てクローズドでやってました。大昔なのでメーリングリストを記事ごとに作ってみたいなことやって、関係者間で共有みたいな。公開できる記事は公開で編集やって全然でいいですよね。 + +三村 +: そうですね、みよひでさんにやっていただいたやつで、GitHub 化したことと、あとは Markdown 化はすごくありがたかったですね。昔は Hiki 記法でしたっけ。 + +笹田、高橋 +: そうですね。 + +neko +: 違ったんだ。 + +三村 +: 最初の頃はいいんですけど、やっぱみんな Hiki 記法とか知らない時代にだんだんなっていって。マークダウンが主要になると、みんなあと共有手段があんまなかったから Google Docs で書いて出してくれるか、Markdown でテキストをメーリングリストに添付してくれたものを編集部の人が全部 Hiki に直して、みたいなことをやっていたので。すごい手間だった記憶はありますね。 + +neko +: それは大変。 + +hogelog +: るびま、この話の流れからするとるびまは今後 100 年 200 年残していきたいみたいな気持ちがありそうですが。あるかな、ある気がしますが、Markdown とかの静的なデータになっているのは取り回しが良さそうですね。過去のものを参照しようとすると、動的なシステムの +上に乗っかってたんだろうなみたいなものほど結構失われがちな感じがある。 + +高橋 +: そういう意味ではもともとが Hiki なのでソースが全部 Hiki の形式で残ってたというのは移行の時には便利だったという感じはしますね。これが HTML だったら大変でしたからね。 + +neko +: 私 Hiki って知らないんですけど、どういう感じなんですか。 + +高橋 +: 基本的に Wiki の一つで Wiki 記法の亜流というか派生と言うかみたいな感じで、だから書き方としては Markdown とそんなに仕組み的には変わらないんだけれど、記法は違う、というか。 + +三村 +: あと大きいのはプラグインが一番大変だった気がしますね。独自記法みたいなのを Hiki のインスタンス単位でプラグインとして入れれるので。それが普通の Markdown 記法には当然ないので、たぶんみよひでさんが Jekyll か何かでいろいろ直しているのかな、そこら辺。フッターとかあの辺はそうです。フッターというか注釈。 + +neko +: 途中から GitHub に来たということだけは残っているから、見て知っていたんですけど。そこまで違うとは知らなかったです。 + +### おすすめ記事 + +neko +: 私が聞いておきたいと思っている質問でまだ聞いていないのは、おすすめの記事とか号とか。なんでかっていうと最近、例えば今年の RubyKaigi も 3 割 4 割ぐらい初めて参加した方だったと思うんですけど、コロナぐらいから Ruby を触り出したとか、最近 Ruby コミュニティに参加するようになったという方って少なくないと思っていて。 +だけどそういう方ってあまりるびま読んだことがなかったりする。この 20 周年の記念の記事もそれで初めてるびまの記事を読むっていう方もいらっしゃったりすると思うので。過去の中で一番のおすすめとか思い入れのある記事とかを伺ってご紹介できるといいなと思ったので、これだけは聞いておきたい。何がありますでしょうか。 + +笹田 +: 巻頭言... + +一同 +: (笑) + +笹田 +: 思い入れが高いのはなんかね、苦労したので Hotlinks のインタビュー記事ですね。なんかこの人のどういう人なんだろうって聞いたことある人を調べていただくのがいいのかもしれないですけど。あとは新しいのから読んでいただくのがね。一番近いこと書いてあるし。 + +高橋 +: Hotlinks は知ってる人の名前があればその人のインタビューを読むのはすごい良いと思います。 + +hogelog +: 個人的には笹田さんの YARV Maniacs チルドレンみたいなところがあるので割とお勧めしたいんですが、今の人にお勧めできないんでしょうか。 + +笹田 +: VM 書きたい人が。だいぶ YARV の中身も変わりましたけどね。 + +hogelog +: 割とあそこからそういう VM、言語処理系、スクリプト言語処理系にどっかかりですって人は世の中にもそれなりにはいるんじゃないかって思って。 + +笹田 +: 書いて良かった。あとはやっぱ昔の歴史かな。今となっては RubyGems があって当然なんですが、RubyGems は著名なパッケージソフトウェアふたつのうちのひとつだったっていう。るびまがどちらも紹介してまして。そういう、昔はこれが普通じゃなかったんだなみたいな、とかは昔話として面白いかもしれないです。そういえば歴史の話だと 2004 年っていうさっきの思い出話の中であったんだけど、2004 年ちょっと面白い年で。Ruby の会ができました、Rails が最初にリリースされました、YARV が開発されましたっていうちょっとなんかいろいろ始めた年だったっていうので思い出深い年ではあります。Ruby Conference っていうのに 2004 年の 10 月にありまして。ここで私の発表と DHH の発表があって。DHH が Rails の発表して、高橋さんがすごい喜んで興奮してたのを覚えてます。 + +高橋 +: 面白かった。そこでウケてたのは、当時は Ruby 界隈ではあんまり Web の話って、なくはないんだけれど、そんなにはなくて。Ruby をやってる人っていうのはプログラミング言語が好きな人で、 Web が好きな人はあんまりいなかったんですよ。なので仕事で Web やってますみたいな人ってそれほど多くなかったんですね。今だとあんまり考えられないかもしれないですけど。Web フレームワークの新しいのを作りましたみたいな話は Rails 以前にもいっぱいあったし、その年にも他にもいくつか出てたはずで、珍しくはなかったんだけれど、でも Rails はちょっと本気度が違う感じで面白かったっていう。でも本気度が違うにしてはちょっと野心的すぎて、これは本当に使い物になるのか、それともネタなのかよくわからんみたいな感じだったんですよ。だってデータベースのモデルのクラスを作りましたとかって言って中身はなくて、それはカラムとかが自動的にデータベースから引っ張ってくるのでわざわざ書く必要がないからです、みたいなのはこれジョークかなんかなのかなと初見で思うわけですよ。当時は Java で getter、setter とかを一生懸命書くのがプロの仕事みたいな ( 本当かな ? ) 考え方があったわけですよ。そういう意味ではすごい面白い発表だったなあと、面白いのが出てきたなっていうのはありましたね。一緒に ogijun もいて、ogijun さんはそれは WebObjects で見てきたやつなので、別に「ふーん」みたいな感じで軽くあしらっていた。 + +三村 +: あれですよ伝説の、ogijun さんがあんまり興味を持たなかったから日本の Rails は 1 年遅れたみたいな。 + +笹田 +: そういう伝説があるんですか。 + +三村 +: なんかよく聞きましたね。 + +笹田 +: 高橋さん、こんな感じで Ruby が広まると思いました? + +高橋 +: いや全然。 + +一同 +: (笑) + +高橋 +: そのうち、Ruby 弱くなるのではみたいな、ずっとそう思って今に至るっていう感じですね。もう仕事で使われなくなるんじゃないかみたいな危機感は 20 年間ずっと、今でもあるっていう感じです。 + +笹田 +: 今でもある。なくなったら私あれですね、失業しちゃうので頑張っていかないとね。 + +高橋 +: ささださんもそのうち Ruby じゃない処理系を作らされるようになるかもしれないなみたいな危機感は今でもあるにはありますが。それでも Ruby の会自体はおかげさまで扱えるお金が増えてきていて、それで言うとたとえばるびまにしても、お金を突っ込もうと思ったら突っ込めるんですが。ただ結局お金の問題ではないような感じになっちゃうと思うんですよね。やる気というかモチベーションというかが全てで、それはお金では買えないものなので。例えばさっきの原稿料みたいな話とか、今だったらやろうと思ったらできるんですけれど、まあでもそれをやって本当に解決になるのかっていうのはよく分からないですね。そこにインセンティブを求めるのはやっぱりるびまとしてはあんまり良くない、良くないというかダメではないかもしれないけど役にはあんまりたたないのかなという気がしますね。 + +三村 +: 一度 Ruby の始め方みたいな記事をお金出して誰かに書いてもらうみたいな話があったんですけど、それは若干違うんですかね。あのなんだっけ。 + +笹田 +: あの五十嵐さんとかに書いてもらおうとか、ああいう話だよね。 + +三村 +: そうですそうです。あの Ruby を始め出した人がどうやってプログラミング、Ruby のプログラミングの始め方を知るかみたいな入門記事を 1 個置きたいっていう話があって。それをお金を出して書いてもらうとかでもいいのかなっていう話を。 + +笹田 +: ぜひ、いいと思う。 + +三村 +: それをどうメンテし続けるかみたいなこと悩ましいなっていうのがあるんですよね。 + +neko +: メンテは確かに大変です。 + +笹田 +: それでお金で出して書いてくれる人がいれば全然いいんじゃないですかね。 + +三村 +: 毎年 1 回書いて、してもらう。お金を出して。そのモデルだったら確かに良さそうな気はしますね。 + +笹田 +: もしやってくれる人がいれば、いいのがあれば。 + +三村 +: どうやって人を決めるんだろうがあるけど。 + +高橋 +: 技術書典で売った方が早そう。 + +笹田 +: 技術書展で売ったやつをお金払って掲載させてもらえれば。 + +高橋 +: るびまにはそのまま載っけるみたいなのでも。 + +笹田 +: いいんじゃないですかね、もしそれを許してくれるなら。 + +三村 +: それが売れなくなりますよね。 + +笹田 +: だから許してくれればですよね。 + +高橋 +: そう考えるとどの程度のものが欲しいかですよね。 + +三村 +: でもそうか、その昔[ピッケル本]({{base}}{% post_url articles/0016/2006-09-20-0016-Book-Pickaxe2 %}) とかって Debian の apt で落とせませんでしたっけ。 + +高橋 +: あれは普通に公開されていたので。 + +三村 +: なるほど。公開されている上に普通に買えていた。 + +高橋 +: あれは Dave Thomas というか PRAGMATIC PROGRAMMERS が、Ruby はオープンソースなんだから、Ruby のドキュメントもオープンソースにすると、みんながそういうふうな感じで書いてくれるのではというのを期待して公開してたんだけど、あんまりみんなついてきて来れなくて残念みたいな。そういうムーブメントは起きなかった。 + +三村 +: なるほど。 + +高橋 +: なので別に今からやろうと思ってもそれはそれで。 + +三村 +: じゃあやってくれる人次第。これが記事になった暁にそれを読んで、誰かが声をかけてくれるといいかもしれないみたいな感じですね。 + +### 読者のみなさまへ + +neko +: 最後に、読書の皆さんにメッセージをお願いします。 + +笹田 +: そうですね。るびま 20 年も続いて、初めて良かったと思います。読者の方がいてくださるのと、さらにそれを書いてくださる方が、継続してメンテナンスしてくださる方が偉業だと思うので深く感謝します。今後もこの 4 桁のナンバリングが役に立つように、Ruby 残るといいですね。 + +neko +: ありがとうございます。高橋さんいかがでしょうか。 + +高橋 +: 私からは読んでいただいてありがとうございますということと、読まれた方で興味があれば原稿書いてください。 + +neko +: さすが。ありがとうございました。 + +一同 +: ありがとうございました。 + +## 脚注 + +[^1]: Internet Relay Chat の略。チャットシステム。 +[^2]: [Ruby との出会い、Rails の衝撃、Ruby コミュニティの面白さ【 Rubyist めぐり vol.1 takahashim さん】](https://product.st.inc/entry/rubyist_meguri01_1) diff --git a/images/0064-20thInterview/portait_kaicho.png b/images/0064-20thInterview/portait_kaicho.png new file mode 100644 index 00000000..7d9dc089 Binary files /dev/null and b/images/0064-20thInterview/portait_kaicho.png differ diff --git a/images/0064-20thInterview/portrait_ko1.png b/images/0064-20thInterview/portrait_ko1.png new file mode 100644 index 00000000..302469ce Binary files /dev/null and b/images/0064-20thInterview/portrait_ko1.png differ