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huideyeren committed Jan 23, 2024
1 parent f515753 commit 2355ee2
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= 漢詩「降誕祭」

この記事は「言の葉の集い Advent Calendar 2022」に投稿した@<tcy>{12}月@<tcy>{25}日(日)の記事です。

このアドベントカレンダーは https://adventar.org/calendars/8220 で公開されています。

== 訓点ありの詩

//texequation{
$$
降誕祭  路易莎夏洛特\\\\
\kundoku{落}{らく}{}{}
\kundoku{日}{じつ}{}{}
\kundoku{猶}{な}{オ}{}
\kundoku{燈}{とう}{}{}
\kundoku{火}{か}{アリ}{}\\
\kundoku{昏}{こん}{}{}
\kundoku{鐘}{しょう}{}{}
\kundoku{響}{ひび}{ク}{二}
\kundoku{茗}{めい}{}{}
\kundoku{渓}{けい}{ニ}{一}\\
\kundoku{鰥}{かん}{}{}
\kundoku{民}{みん}{}{}
\kundoku{催}{もよお}{ス}{二}
\kundoku{小}{しょう}{}{}
\kundoku{宴}{えん}{ヲ}{一}\\
\kundoku{聖}{せい}{}{}
\kundoku{夜}{や}{ハ}{}
\kundoku{勿}{な}{カレ}{二}
\kundoku{悲}{ひ}{}{}
\kundoku{啼}{てい}{スルコト}{一}
$$
//}

== 書き下し文

//noindent
落日 @<ruby>{猶,な}お@<ruby>{燈火,とうか}あり@<br>{}
@<ruby>{昏鐘,こんしょう}@<endnote>{konsho} @<ruby>{茗渓,めいけい}@<endnote>{meikei}に響く@<br>{}
@<ruby>{鰥民,かんみん}@<endnote>{kammin} @<ruby>{小宴,しょうえん}を催す@<br>{}
聖夜は @<ruby>{悲啼,ひてい}すること@<ruby>{勿,な}かれ

//endnote[konsho][夕方の鐘]
//endnote[meikei][御茶ノ水の雅称]
//endnote[kammin][老いていて妻のない民]

== 意訳

//noindent
日が落ちても街の灯りが煌々と輝き@<br>{}
御茶ノ水には夕方の鐘の音が響く@<br>{}
中年ぼっちが小さな宴を開いているのだから@<br>{}
クリスマスを嘆き悲しんではいけませんよ

//printendnotes

//embed[latex]{
\includefullpagegraphics[scale=0.7]{images/nikolai.pdf}
//}
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@@ -0,0 +1,3 @@
//centering{
この本をこれまで出会ってきた全てのフレンド、特に至らぬ私をサポートしてくれた友および遠い異国で戦火に苦しむ友に捧げる。
//}
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= 我等復活の日を待ち望む

== はじめに

この小説は『聖夜の奇跡』と『主は、希望は、我の傍らにあり』の続編として書かれたものです。

ちょっと重すぎるかもしれませんが……。

== 本文

夕方までは大嵐だった天気が、嘘のように静まりかえっていた。今日は、一週間遅れの復活大祭。我々はこの復活大祭をどんな祭りよりも盛大に祝うのだ。この復活大祭を祝う前にはどんな祭りも祝ってはいけないという習わしに則って、僕は電車に乗って聖堂を目指していた。

「夜の電車に乗るなんて久しぶりですね」

僕の天使、明日香がニコッと笑いながら微笑む。しかし、僕の表情は浮かなかった。昨晩僕が見た夢は、あの友人の記憶だった。私が恋の悩みに苦しんでいたとき、親身に相談に乗ってくれたこともあった。まさか同じ人に恋をしていて、そして彼女は彼を選んだなんてその時は思いもよらなかったが本人は悪気がなかったとは思っている。他にも、文化系の僕をいろいろと助けてくれた。そんな彼の姿がちょっとうらやましかったが……。

思い出に苦しむ僕の顔を見て明日香は声をかけてくれた。

「まだ、昨日の夢を、鮮明に覚えているのですね……」

首を縦に振る僕。あの時、何か手助けをしてあげることができたらと思うと、強い後悔に襲われてしまう。僕は、しばらく言葉が出なかった。そんな時、聞き覚えのある声を聞いたのだった。

「あら、イオシフさん、ナデジダさん、こんばんは。今日はパスハね……」

声をかけてくれたのはウクライナから日本に来ているオクサナさんだ。その声に気付いた僕は軽く会釈する。

「オクサナさん、こんばんは。いよいよ今夜ですね……」

心に何かが引っかかっているような顔で僕は答えた。

「浮かない顔ね、何かあったの?」

オクサナさんは信仰心に篤く、教会の事を陰からいろいろ取り仕切っている、縁の下の力持ちだ。落ち込んでいる僕の顔を見て、何か察したに違いない。

「実は、ユウさん、亡くなられた友人のことが夢に出ていてそれで苦しんでいるんです……昨日も全然眠れなさそうで……」

僕の代わりに明日香がオクサナさんに答える。その聞いたオクサナさんの表情が、突然暗くなる。

「親しい人を失った苦しみは、辛いものね……私にもわかる……」

オクサナさんの祖国では多くの人が希望を断たれてしまっている。オクサナさん自身は日本暮らしが長いが、娘さんは難病で永眠しているのだ。そんな事を思うと、胸が締め付けられるように痛くなる。

「……一時期は私も希望をあきらめかけたわ。私たちは無力だと、思い知らされたわ。でも、きっと希望はあるもの。前を向いて、歩いて行くだけよ。あなたが諦めてしまったら、きっと神様も悲しむわ……」

オクサナさんの言葉に、少し心の荷が下りるような気がした。そんな僕は、一昨年の降誕祭の前の夜に神父様から聞いた言葉を思い出していた。神様は人間が一人でいることを、そして、一人で悩みを抱え込むことを望んでいないのだ。嬉しいことも悲しいことも分かち合うこと、それが愛なのだということを思い出した。友人の葬儀を取り仕切ってくれたお坊さんも、分かち合うことの大切さを教えてくれた。

そんな事を思っていると、電車は聖堂の最寄り駅のホームに滑り込んだ。あの降誕祭の前の夜に、神父様が私を励ましてくれたあのホームに。絶望の虜になることから逃れたあのホームに。僕たち三人は電車を降りると聖堂に向かうのだった。もちろん、無数の光り輝く星たちに照らされて。

聖堂にたどり着くと、お祈りの準備が始まっていた。痛悔を行ってくれる神父様の列に僕たち三人は並ぶと、まずはオクサナさんから痛悔を始めるのだった。聖書を読む声に阻まれて何も聞こえなかったが、オクサナさんの目には涙が浮かんでいた。僕と明日香はオクサナさんの苦しみが癒やされるように心から祈った。続いて明日香の番だ。神父様に罪を悔いる明日香の姿はどこか輝いていた。神父様は明日香の頭に手を乗せると祈りの言葉を口にして十字を描いた。それが終わると、明日香は十字架と聖書、そして神父様の手の甲に口づけをするのだった。この次は、自分の番だ。

神父様の前に進む。僕の顔を見るなりかけてくれた神父様の言葉に、僕は神様の愛に抱きしめられるような感じを覚えたのだった。

「友人のことが、夢に出ていたんですね……」

「はい、私には、何もできませんでした……。何かできていれば、彼を助けられたかもしれません。私は、無力なる自分自身に苦しんでいます……」

その言葉を聞いた神父様は、僕に慰めの言葉をかけてくれた。

「本当に、つらかったんだね。でも、君は強い。あの時、あのホームで、絶望を選ばなかったんだから……」

あの日の光景が脳裏に焼き付く。その後の降誕祭の後で、僕は暴漢に襲われそうになっていた明日香を助けたのだ。それから、僕の思いは明日香に通じ、今では仲の良い夫婦になっている。もし、またここで絶望を選んでしまったら……。明日香も神父様も、そしてオクサナさんも神様も悲しむだろう。だから、僕は、前を向いてみんなで一緒に歩いて行くことを決めたのだ。そんな僕の頭に神父様は手を乗せ、僕の「罪」が赦されるようにという祈りの言葉を唱えたのだった。胸の中に湧き上がる、強い希望。彼の「過ち」を赦してくれるように神様に祈ることが、僕のすることなのだと気付いたのだった。

お祈りは続いていく。大きな十字架をもって聖堂の周りを回る十字行が始まると、信徒たちはろうそくを片手に聖堂の周りを一周して入口に集まる。「ハリストス死より復活し死を以て死を滅ぼし墓にある者に命を賜えり」と聖歌を歌いながら。

そして、神父様が大声で叫ぶ。

「ハリストス復活!!」

信者たちは直ちに応える。

「実に復活!!」

神父様は、今度は教会スラヴ語で先ほどの言葉を繰り返す。

「ハリストス・ヴォスクレッセ!!」

そんな僕たちも教会スラヴ語で言葉を返す。

「ヴォイスティヌー・ヴォスクレッセ!!」

続いて、神父様はギリシャ語で復活を讃える言葉を叫ぶ。

「ハリストス・アネスティ!!」

そんな僕らもギリシャ語で応える。

「アリソス・アネスティ!!」

まさに、今日、僕らの心の中に主はまた復活したのだ。何度も繰り返される復活を讃える言葉の中で、僕は友人の事を思い出した。自ら絶望にその身を落とした彼の罪が赦されるように、僕は何度も祈った。僕の何倍も、恵まれていた彼。そんな彼ですら、希望を諦めるほどの苦しみに襲われたという事実。僕はその事実にただ震えることしかできなかった。神父様は、神様はいつも私と共にあるとおっしゃってくれたけど、神様がいてくれていることに気付けなかったら僕も同じように道を踏み外していたかもしれない。今となっては、その奇跡に感謝することしかできない。そして、彼のために祈ることも。「主憐れめよ」という短い祈りの言葉を何度も繰り返していたのかわからなくなるぐらい、僕は祈っていた。

そしてお祈りが終った。気がつくと聖堂には朝日が差していた。

「この光、本当にきれいですね……心が洗われる気がします」

明日香が目を輝かせながら僕に語りかけてくる。神様は最初に「光あれ」といってこの世に光を作ったのだという。このまぶしい朝日に照らされる聖堂の中で、黄金に飾られたイコノスタシスはより一層輝いていた。これが、主の復活の瞬間なのだろうかと、僕は思った。僕は明日香の言葉に首を振ると、二人で十字を描いて聖堂を出た。朝日に包まれた街は、なんときれいなことだろう。

僕らは聖堂の前の通りに出た。あのクリスマスの夜に、まさにこの場所で明日香を助けたんだ。その明日香が、今は僕の隣で僕の腕にしがみついている。その瞬間、いろいろな考えが思いをよぎる。五年後、十年後、老いても僕たちはきっと愛し合っていける。神様は死すら僕たちを分かたないのだ。脳裏には、母親になった明日香と、そして僕たちの愛娘。彼女たちの両手を繋いで聖堂に向かう僕らの姿。こんな未来は、きっと来る。そう確信したとき、明日香から思いがけない言葉が飛んできた。

「本当に、今まさに立っているこの場所で、私を助けてくれたんですね。ありがとうございます、私の天使様……」

明日香は頬を赤らめて僕の頬に口づけをすると、僕の顔は朱に染まってしまった。僕の天使様から「天使様」と言われるなんて……。

「もう、お二人さんったら若いんだから……末永くお幸せにね……」

背中の方から声がする。オクサナさんだ。この言葉に僕たちは我に返った。多くの人を失っているオクサナさん。多くの人と分かたれてしまった彼女の悲しみが、痛いぐらいに私を刺す。

「でも、今日ほど喜ばしい日はないわ。みんな、天国で、きっと会える……」

その言葉の重さを、僕たちは受け止めるのだった。そんな中、脳裏で浮かんだ光景の続きがふと思い浮かぶのだった。聖堂にたどり着いた僕たち三人を温かく迎えてくれるオクサナさん。僕たちの娘を、オクサナさんが我が子のように慈しみかわいがる光景。この輝かしい未来が我々に訪れることを心から祈りながら、僕たちは家路に向かうのだった。帰り道の電車で、僕たちは何とか座ることができた。夜通しのお祈りに疲れ切った僕は睡魔に襲われて、明日香にもたれかかってしまったのだった。電車の中で睡魔に襲われた僕の手を明日香はぎゅっと握って寄り添ってくれた。

「ユウさん、もう、降りる駅ですよ……」

もう気がつくと、自宅の最寄り駅だ。周りを見渡してみるとレジャーの荷物を持った人たちが大勢乗っている。そう、今日はまだ日曜日の午前中なのだ。でも、今日はそれ以上に思い出に残るだろう。なぜなら、私の天使様と、そして多くの人と幸せを分かち合えたのだから。

//printendnotes

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= 壁を越えるのが、私の夢!

== はじめに

この作品は「FM言ノ葉」で行われた企画、「第6回 きっとあなたの1400字」に投稿した作品になります。

それと共に、「第4回 VRメモフラワークショップ」にて、私自身をモチーフに書き上げた自伝的作品になります。

その時の元ツイートは https://twitter.com/Hermit_Heaven/status/1613894820787007490 、マインドマップはこちらになります。

//image[mindmap-louisa][「第4回 VRメモフラワークショップ」でのマインドマップ][scale=0.6]{
元ツイート: https://twitter.com/Hermit_Heaven/status/1613894820787007490
//}

== 本文

この私に、生きる価値はあるのだろうか。

何度も失敗しては何度もリセットして、たどり着いたのはVRの世界。外見もリアルの肩書きも気にせずに交流できるこの世界は、私にとっては私が私らしくいられる世界だった。そんな中でイベントに参加し、多くの人とふれあって、そして親しくなって……。

でも、何かがうまくいかない。そう思ったときは遅かった。二週間いっしょの場を共有するイベントに私は応募していた。ふと見ると、親しいフレンドさんも結構応募していた。そして、多くのフレンドが抽選に通っていた。でも、私に桜は咲かなかった。今は秋桜の季節なんだ。桜は咲かない。そう思い込んでいた。目の前には、大きな壁がある、そう感じたのだ。そんな時ひねったラジオからは、ロシアのウクライナ侵略のニュース。新しく引かれてしまう壁に、私は憤った。ドニプロの鳥は国境を気にせず西へ飛んでいける。私も鳥になって、壁を越えたいと思ったのだ。壁によって切り離された人たちを想いながら。

季節は菊の季節になっていた。そんな私に届いたのは、サクラサクの一報。菊の季節に、桜が満開。それから数週間、楽しいひとときを過ごした。壁を越えた新しい出会いに、新しい世界。でも、私の心には、わだかまりが残っていた。私は私に問いかける。もし秋桜の季節に桜が満開になっていたら、私はこの世界の美しさに気付けただろうか。

そして、私は、ある場所に立っていた。それは、現実の高校時代に過ごした思い出の地。あまりにも美しいけれど、人気のないその世界は、何故か儚げだった。改札口から外へ出ようとしても、出られない。ここにも、壁があった。壁の外に出たという話はいろんな人から聞いている。この外の美しい世界を知りたい。知りたいんだ。でも、目の前の壁は、あまりにも大きかった。

そして、後で知った。この世界を教えてくれたのは、壁の向こう側の人だったのだ。ウクライナの人が作った、井の頭公園駅のワールド。戦火の中で作られた奇跡。そんな私は、学園で着ていた制服を着て、その地に立っていた。目の前の壁を越えるがあるんだと目の前の女の子から教えられた。その女の子の着ているワンピースのスリットから、ちらっと覗く水着。こんな所も私そっくりだ。その子の導くままに、私は進んでいた。

目の前にあるのはフェンス。その女の子曰く、この壁を越えたら世界が広がると。意を決して飛び越えると、その前には思い出の公園が。今、私は壁を越えたんだ。女の子もいっしょに、手を叩いて喜んでくれた。今度は、私は案内する番だ。

ウクライナの民族衣装に身を包んだ私は、井の頭公園の壁の越え方を案内していた。そんな中に、懐かしい顔を見つけた。あの時先に当選したフレンドさんだ。そして、話が、いろいろ弾む。もう一つの壁を越えられたと思った実感だった。

目の前にあるフェンスを、みんなで飛んでいく。多くの人に、壁を越える勇気を教えよう。私の人生は私に問うている。私がなすべきことは何かと。今なら、その問いに、自信を持って答えられる。広い世界を教えること、そしてその壁を越えるために背中を押すこと。

そうだ、あの教壇に立とう。また桜は満開だ。振り向くな、過去には夢がない。あなたも私も、今、未来に向かって夢を駆けているのだ。壁を越えて、世界に平和を。私は、前へ、駆け続けるんだ!

//embed[latex]{
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//}
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